有機農業リサーチプロジェクト No.028

川崎 眞志男さん

川崎 眞志男さん

信念がないとつまらん

アンケートインタビューを通じて感じたことは、ご自身の考えがしっかりあり、まったくぶれないこと。会話の中に時折みせられるやさしく真剣な目から、川崎さんのなんともいえない魅力を感じた。
 川崎さんの確立された「環境回復型農業」は生命エネルギーに満ちた田んぼから生産される米はもちろんのこと、排水までも生命体に好影響を与えているという。現在バランスを失った環境を自然農法で回復している実践と川崎さんの熱い思いを話してほしいと、全国から声がかかるのも納得できる。
最もこだわっているのは品質。品質向上とその安定が第一であり、収量はその次と言われる。
 設備投資額が大きいが、一度に行うと失敗する。やはり技術向上が先行で、必要な機械を見極めることが大切等、まさにプロフェッショナルな農家である!!

有機農業をはじめたきっかけ

実家が農家であり、後継であった兄と入れ替わる形で就農。農業の基本的技術は母から教わった。当時はミカンやキュウリ、メロンなども栽培していたが、母の引退を機に水稲の自然栽培1本にしぼった。
 自然栽培を始めるきっかけとなったのは残留農薬の気づきである。コシヒカリの倒伏試験を依頼された際に使用したホルモン剤が、翌年使用していないにもかかわらず、その効果が現れた。「これはおかしい」と気づき、自然農法を開始、4~5年は苦労したが、「食べていただいた方がより元気になってほしい!さらに昔のような環境の改善につながれば!」という思いで今日までがんばってきた。
 実際、アレルギー体質の方から「川崎さんのお米なら食べられました」などというお便りをいただくこともあり、また田んぼの下流域では藻場等の再生が確認されている。

<栽培品種>
 現在はコシヒカリとその他雑穀(黒米、赤米、緑米、モチ、香り米)の水稲のみを栽培。
 収量の安定を目指すなら普通作のヒノヒカリがよいと思うが、過去に委託試験で色々な品種を栽培した結果、食味に優れているコシヒカリを選んだ。また、コシヒカリは天草の気候を活かした早期作ができることが、もうひとつの理由である。

<ほ場環境>
 圃場は干拓地で海抜3m程度。土質は排水性の悪い灰色の土(細粒強グライ土)であるため、地下水位が高く、また排水性が悪い。そこで収穫後、デスクロータリーで荒く起こす。昔のように開墾して圃場を作っていたことを考えると、この対策で十分である。
 多くの圃場は基盤整備されており1枚が平均40a(4反)~50a(5反)であるため作業効率はよい。しかし、山の方には棚田が残っているが作業効率が悪いのでコシヒカリは作っておらず、栽培面積の狭い雑穀を植えている。

<施肥>
 その圃場で出来たはワラはすべて収穫後すき込み、循環させている。その他にはミネラル補給に天然にがりを適時、適量流し込んでいる。

<種>
自家採種。種採のポイントは収穫前に良い田を見極め選定すること。

<苗>
 10年以上前から赤土を焼いたもの(焼土)を購入し利用している。過去には購入した赤土を自前で焼いていたが、品質の不安定(苗立ち枯れが発生)や面積拡大による人手不足もあり、現在では市販の焼土を利用している。
 は種量が多いので、1週間おきに順次播種していく。1反の育苗ハウスを2回転させている。
 潅水については感覚的に行っているので、経験で得るものである。

<雑草対策>
 ジャンボタニシに働いてもらっている。その割合は50%程度。そのほかには自作の除草機(田植え機を改造)で田植え後すぐ(4月下旬)に1~3回程度除草を行う。昔は除草に追われていた。タニシもあまり働かず、いまより多くの草が生えていたので全体作業の80%以上が草取りだった。しかし自然の基本を理解し、土づくり、ジャンボタニシの利用等を実践できるようになってからは、除草は全体作業の30%ほどにまで下げることが出来た。やはり草に勝たないと米はとれない。

<病害虫対策>
  イノシシ・シカよけのため電気柵を設置している圃場もある。その他病害虫対策は自然栽培を始めてから被害にあわないので、特別行っていない。

<流通・販売>
 個人宅配(全国)やJA出荷(MOA)、直売が主な販路である。
 売値は650円/kg(収量約300kg(5~6俵)/10a)。宅配は1kgから承っている。
 生産コストは615円/kg。設備投資が大きいので、減価償却が生産コストの大半をしめている。
 販売するときに一番気をつけていることは、「前払いもしくは着払い」にしていただくこと。過去に業者にだまされた(後払いで振込なし)経験から、初めての場合、これを理解していただいている。

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