有機農業リサーチプロジェクト No.055

武藤 勝典さん

武藤 勝典さん

放牧場で走る豚

放牧による養豚を営んでいる珍しい農家である。豚は放牧すると動き周り運動するため一般の養豚の豚より肉が締まり健康にもなる。飼料も遺伝子組み換えでないオリジナル、こだわりが見える。数年前には「走る豚」としてメディアにも取り上げられ、食材としてレストランなどでの評判も高い。森の中に放牧されている豚は人懐っこく走り回り、元気に放牧される姿を見ると、人気が高いことが肯ける。同じく飼料にこだわった鶏卵、有機栽培の野菜、無肥料栽培の水稲などを、屋号「やまあい村」として営まれている。

後継者である勝典さんは、大学を卒業後就職し、2年ほど都会で働いた後、父の経営の養豚部門を担当するようになったそうだ。現在は養豚を本人と弟が担当し、父が水稲、家族全員で野菜、しいたけ、鶏卵と、担当を分担している。

<栽培品目>
水稲(ヒノヒカリ)50a、栗20a、野菜(ミズナ、サントウナ、ニンジンなどその季節の葉菜類、根菜類、果菜類など少量多品目で栽培)30a

<ほ場環境>
標高:400m 土質:黒ぼく土

<土づくり>
鶏卵で発生した鶏糞、モミガラ、米ぬかが混ざったものを畑に20kg/10aほど薄く播く。
水稲に堆肥は入れない。

<施肥>
野菜:石灰40kg/10a、米ぬか少量。
水稲:20年ほど完全無肥料、収量約4~5俵/10a。

<育苗>
葉菜類、ハーブは自家育苗。その他は親戚の苗屋から購入している。
用土は畑の土としいたけほ場の腐葉土を混ぜて作る。育苗はハウスで行う。温度管理を徹底するようにしている。

<雑草対策>
野菜:ポリマルチ、手除草、中耕
水稲:ジャンボタニシ 冬の寒さで数が減ることがあるので七城からもらってくることもある。水管理は浅水からだんだん深水にしていく。

<病害虫対策>
虫害:葉菜類は防虫ネット、捕殺で防除している。他は特に何もしない
病害:特に何もしない。
鳥獣害:猪防除として電柵をしている。

<畜産>
①飼育している家畜
母豚4頭 肉豚130頭  350頭/年出荷 
鶏(卵)150羽(内約60%が採卵鶏) 90個/日出荷
豚は放牧での飼育。鶏は平飼い。養豚放牧に関しては一般の1頭あたりの飼育面積の100倍の広さがあるとのこと。
豚品種:「LWD(ランドレース♀×ダイヨーク♂の豚×デュロック)」3代交配豚と呼ばれる。肉質に優れるかけ合わせになっている。
鶏品種:ボリスブラウン

②家畜の入手方法
豚:自分で産ませる以外に、大津のコーシンという業者から子豚を購入している。
鶏:山鹿の種鶏場から購入している。

③餌について
豚:遺伝子組み換えでないオリジナルの特注配合飼料にムギ、炭を混ぜている。その他大津の農家から規格外のサツマイモ、カボチャをもらってきて与えている。
鶏:遺伝子組み換えでない購入飼料に米ぬか、炭、くず米を混ぜて与えている。
放牧により豚が走り周り元気なので、餌の消費量も一般の養豚より多い。また身体が締まるので一般の養豚は6ヶ月程度で出荷するが、7~8ヶ月で出荷できる体重になる。「走る豚」としてTVで紹介されたことがある。

④飼育方法
豚:放牧約40ha。  3m×3m×高さ3mの飼料小屋を各所に設置している。雨天時は豚が雨宿りしたりする場所になっている。
鶏: 20m×30m×高さ3mの小屋3棟に50羽ずつ分けて飼育。

⑤糞尿の処理と利用方法
豚は基本的に放牧地にそのまま残す。放牧地だったところを耕して畑にしたりしている。鶏糞は野菜に利用している。

⑥使用している獣医薬品
基本使わない。死にそうな時に獣医さんに処方してもらう。鶏は何も使用していない。

⑦有機農業全体の中での畜産の位置づけは?
養豚:一番の収入源 中山間の条件不利地域で豚の放牧は農地や山林を維持していく上で有効な手段だと考えている。
鶏:手軽に買える値段で質の良い卵を消費者に提供する

<流通・販売>
販売地域:福岡、熊本、東京。
販路開拓:知り合いの口コミ。営業はしていない。
こだわり:できるだけ来て直接見て買ってもらうようにしている。実際に放牧されている豚を見せることが一番の宣伝になる。

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