有機農業リサーチプロジェクト No.051

松本 英利さん

松本 英利さん

有機かんきつ類、樹なりで出荷

松本氏は水俣の出身であり、当時水俣では水俣病認証や環境問題がクローズアップされていいて、里のご両親は無農薬栽培で甘夏を栽培されていた。宇城市で果樹栽培を始めても水俣にいた頃の思いが脳裏から離れず、生協との縁もあり減農薬を開始された。2010年には有機JAS認証を取得された。日本自然農業協会の流れをくむ「肥後あゆみの会」のメンバーの一人として、果樹部門での存在感を示されている。

果樹なので、やはり味に対するこだわりは強いものがある。取り組みポイントは以下の3点である。
①樹なり(樹上追熟)
②地域の資源(資材・微生物)を使ったぼかし作り
③地域の自然の物を使った葉面散布剤(天恵緑汁)の開発・使用
 
果樹は永年作物であることから、一年の失策はその年にとどまらない。その点有機への移行については相応のリスクとご苦労があったと推察される。「減農薬栽培から20年、今でこそ生活できるが、作業はほとんど人力で、収穫量は多くないので、有機農業に魅力があるとは言えない。だからと言って、肥料・農薬を使えばお金は入るがそんな農業をするつもりはない。枯れた木は植え替えながら回復させ、少しずつ立て直しを図ってきた。有機農業の成功には時間がかかる」などの体験に基づく言葉は、有機農業を支えるお一人としての確かさと力強さを感じた。 


<栽培作物>



<ほ場の環境>
・山土:赤黄色土 粘土質で礫を含む
・松橋から三角の途中海岸線。直売所が背後に隣接。近隣には水田・果樹地帯を有する。

<土づくり>
堆肥の投入は毎年ではない。阿蘇原野のカヤや牛ふん堆肥を、除草した草とともに木の周りに敷き詰める時もある。

<肥料>
ぼかしを製造し使用している。
材料:油かす+米ぬか+魚粉+赤土+地元の醤油粕。 うち50%は赤土。
作り方:混合して20~30日で仕上げる。この間3回切り返す。
施用時期:春(4月)と秋(9~10月)の2回。施用量は1回150kg /10a。
2回分で10a当り300kgとなるが、施用後耕耘等は行なわない。
石灰類は今のところ施用していない。

<雑草対策>
①エンジン付きのモアで刈り取る。
②刈払機で刈り取る。
いずれも刈り取り後、樹を中心に周りに敷き込む。
*除草剤を使うと地肌が露出して、乾燥による樹への影響があると考えられる。

<病害虫対策>
基本的には、有機で認められている資材を使用する。
・カイガラムシは手取りを基本として、マシン油、イオウ、無機銅剤等を春先(4月)と初夏の2回使用。
・ミカンナガタマムシは皮目に入り防除が困難。発見が遅れると樹を枯らしてしまう。  
・ダニは現状では問題とならない。
・サビダニには、イオウフロアブルの散布で対応。
・かいよう病は幼果期に風に当たると発生が助長される。ICボルドーを使用。
・黒点病は枯れ枝の処理がポイントとなる。

<今後の課題>
今のところ貯蔵せず、樹なりの出荷が前提である。この方法は味の向上にはつながるが、翌年の樹勢低下が課題となる。

 今後余裕が出れば、カヤ等有機物の散布の増量、天恵緑汁など葉面からの積極散布、有機認証で使える栄養重視型の資材等を試みたい。

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