有機農業リサーチプロジェクト No.048

新田 九州男さん

新田 九州男さん


みかんやレモンの柑橘類を
有機農業で40年

柑橘の指導員をされていたが、約 50 年前に家と土地を買って現在地で就農。指導員としては農薬の使い方を指導する立場だったが、いざ自分で作ってみると農薬を使うことに抵抗がでてきた。どのくらい農薬を使っているのかを計算してみて、その多さに怖くなり、農薬を使用しない農法を始めたと言われる。最初は見た目がいいものを作ることができなかったので出荷先を確保するのに苦労したが、今は販路拡大をしなくても買ってくださるお客さんが固定しているそうだ。

微生物や酵素を使ってぼかし肥料や葉面散布用資材を自家製造し、それを使った柑橘栽培を実践されている。こだわった栽培方法で、味の良い柑橘を作っているからこそ販路開拓せずに20年前からの顧客が離れないのだろう。発酵液肥・天恵緑汁や漢方薬の製造などは大変興味深い。

<栽培種>
河内晩柑、不知火が主力。甘夏や河内晩柑は作りやすい。新品種は病気に弱く、樹勢が弱く、寿命が短いので作りにくい。有機認証ほ場 70a: 不知火、パール柑、レモン 環境保全型管理ほ場 230a: 温州みかん(そうか病が入るので有機では難しい)、河内晩柑(落下防止剤を使用しないと難しい)

<肥料等>
・堆肥は、新規植付けの時だけ植え穴に畜産堆肥を購入して入れる。
・ぼかし肥料
2月上旬、5月下旬、10月の3回に分けて1回当たりに2~3t製造し使用する。
材料:油かす、魚かす、骨粉、米ぬか、腐葉土、糖蜜、水、海水
水分率 50%くらいに調整して管理し発酵させる。1回の製造で使いきり、次回の施用時期になった らまた作るという感じ。1ヶ月ほどで完成しすぐ使用する。
施肥量:温州 200kg/10a、中晩柑 500kg/10a を 3 回に分けて施用。樹冠の下に施用し日光が当たらな いようにする。微生物は日照を嫌うので、日陰の樹冠の下に施用する。 売ってあるぼかしもあるが、売っているものは価格が高いし、ぼかしは生き物なので自分で作った ほうが良い。
・葉面散布資材
下記の①を500倍、②を500倍、③を1000倍希釈して使用する。使用量は300~400ℓ/10a
①天恵緑汁(葉面散布用)
材料:よもぎ、竹の子、セリ、はこべ
漬物の要領で、黒砂糖に漬け緑汁を抽出する。
②食酢
松合食品から2番しぼりのものを購入。
③漢方薬
材料:当帰(トウキ)、桂皮(ニッケの皮)、甘草(カンゾウ)、生姜、にんにく
それぞれを分けてビールに漬けて、発酵液を抽出する。
・カキガラ石灰資材:100kg/10a

<雑草対策>
草性栽培:草刈した草はそのまま残して肥料にしている。ライ麦は時期が来ると自分で倒伏し他の草抑えになる。耕したりはしない。歩行用モア、ハンマーナイフ、草刈機使用。

<病害虫対策>
木をよく観察すること。病気や虫害はどうしても出てしまうので、カイガラ虫は発生したら枝を切り落とすなど早めの処置が重要。
ダニ類が発生しても放っておくのが一番良い。発生しても木が健康なので被害が広がらない。
猪は電柵で防除。鳥害についてはセトカだけは袋がけするが、他は何もしない。カラスはどうにか防除できるが、ヒヨドリは大群で来るので防除が難しい。

<流通・販売>
グループで業者を通した産直販売と個人宅配が主で、ここ20年間は販路開拓していないが、20年前からのお客さんとの付き合いが今も続いている。農薬を使わないことで、理解のある消費者が買ってくれている。見た目が悪くてもクレームはほとんど来ないし、味は好評である。

 

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