有機農業リサーチプロジェクト No.036

原 誠一さん

原 誠一さん

あたりまえが本物を作る 米・麦・大豆

農業高等学校卒業後、約40年前に後継者として就農。農家の長男でもあり、当時は農家を継ぐことに疑問など持つこともなかった。就農当時は父親と共に慣行栽培で水稲などを栽培していたが、子どもができたことをきっかけに『安全安心なものを自分の子どもに食べさせたい』と思い、約30年前に有機栽培(無農薬・無化学肥料)を始めた。始めた当時は父親から『恥ずかしいから一番遠くの田んぼに植えろ』と言われたり、旅行中に農薬をかけられていたこともあったそうだが、徐々に売上が伸びてくると、何も言われなくなった。認められたという事だろう、と話された。現在は息子(26歳)に栽培を任せ、本人は加工の方に力を入れつつあるそうだ。
「栽培が上手な農家は、圃場も小屋もきれいに整頓されている」と聞いたことがあるが、原さんはまさにそのような農家だった。

<栽培品目>
米:10ha(平均収量6~6.5俵(360kg~390kg)/10a同地区慣行の約2割減)
麦:10ha(平均収量3.5~4俵(210kg~240kg)/10a 同地区慣行の約2割減) 
大豆:70a(180kg/10a 同地区慣行の約2割減)
 七城町は湧き水が豊富であるので、過去には花(カラー(サトイモ科)や白菜などを栽培したが、売値等が不安定なため断念。米・麦・大豆をしっかり作っていこうと考えた。

<土づくり>
物理的には米収穫後に盤を崩すため「スピードカルチ」で25cm程度の荒起こしを行っている。
生物的な土づくりとして、過去には堆肥(豚糞)を投入していたが、餌に含まれている農薬などがフンに残留し作物に残るのではないかと危惧し、15年前に中止した。現在は稲ワラ、麦ワラ等の残渣やアゼ草のすき込みを行っている。これら有機物の分解には特別微生物などを投入することもなく、圃場の土の中にいる微生物に任せており、地力維持につながっていると考えている。田植え前の浮きワラ処理には丁寧な耕うん・代掻きである程度対処している。 
 基本的に無施肥だが、裏作の麦のは種前(稲収穫後荒起こし後)だけはナタネ油粕(有機JAS適合)60~70kg/10aを機械で施肥する。麦栽培では、肥料分を入れないと収量が著しく減少する傾向があると経験上思っている。そのため前述の堆肥を中止してからは、このナタネ油粕を利用している。
また、土壌分析をアグロビジネス(肥料会社:ナタネ油粕購入先)に依頼している。

<種について>
米麦大豆すべて自家採種。
・米(品種) 酒:神力  うるち:ヒノヒカリ もち:くれない 雑穀用米:黒・赤・緑
・麦(品種) 中力:ちくごいずみ(うどん) 強力:みなみのかおり(パン) 裸麦:イチバンボシ(みそ・押麦)
・大豆(品種) ふくゆたか
今後、特別に挑戦してみたい品目・品種等はなく、加工品の商品開発(米・麦)に力を注ぎたいと考えている。

<育苗>
 水稲のみ育苗を行っている。まず種籾を60℃で10分間温湯消毒し、その後水に3日間浸け芽だしを行う。培土は山土100%(購入)を用い、みのる式ポットには種する。育苗上の一番のポイントは水管理である。これは経験して覚えるしかない。また、過去の失敗としては、土が悪く固まってしまい田植え機で抜けないことがあった。そのときは友人から苗を購入し、最悪の事態を免れた。
水稲育苗時にポットを並べるのに1日で12名ほど雇用する。

<雑草対策>
 水稲は、基本的にジャンボタニシの活躍に期待する。ただし、地ならしが不十分な圃場ではジャンボタニシが思うように動けないので手取りを行うこともある。
 麦は、乗用型の機械で中耕を3~4回程度行う。ただし麦が大きくなってからは機械での作業はできない。また「からすのえんどう(雑草)」は収穫物に混入する恐れがあるので、手でしっかり除草する。栽培面積も広いので草取りに追われる時期があるが、「草は友達」と思い作業に励んでいる。

<病害虫対策>
 最も怖いのは水稲のウンカ。平成19年度にはウンカによって全体の6割が収穫できなかった。対策はなるべく田植え時期を遅らせること。中国から親ウンカが流れてくる梅雨時期に水稲につくとそこで子供を産み広がりやられてしまうから。あとは、田の中にいる自然天敵(クモなど)に任せている。

<販売について>
 米では、販売価格(直販)7,000円/10kg。売上の約4割が生産にかかるコストだと判断している。
 加工では、消費期限の長いもの(穀類は1年、乾物は半年)を作るようにしている。そのため回収リスク(売れ残り)はほとんどなし。

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