有機農業リサーチプロジェクト No.014

村山 信一さん

村山 信一さん

失敗を恐れず何事にもチャレンジ

有機農業をはじめて30年以上になる村山信一さん。有機農業を始める前は、米、トマト、きゅうり、ピーマンなどを慣行農法で栽培されていた。農薬のせいで舌のしびれを感じていた頃、飯星幹治さんの誘いで、1977年旧矢部町で開かれた第3回有機農業全国大会に参加されている。その大会で、奈良で開業しながら農薬の害を訴える医師・梁瀬義亮さんの話に感銘をうけて有機農業を始められ、1982年には出荷団体「御岳会」を作られた。また、御岳農協の中に有機農業研究会を設立し、代表を4年務めるなど中心的に活躍され、熊本生協とのつきあいも始められた。
最初に取り組まれた作物は米。当時は草はすべて手取りだったため、消費者の方にも援農にきてもらったという。その後、機械除草からアイガモ農法へと移る中で、面積も拡大し、生産者の仲間も増えていったそうだ。
「ウンカが大発生した時、半分の田んぼにだけ農薬を使用したところ、農薬を使用しなかった田んぼの方がウンカの被害は少なかったという事があり、有機農業に確信を持った。今から思えば無駄だと思われることも多かったが、やっているときは苦にならず、楽しかった、販売については、人より先にやったというメリットは大きかった。販路、生産ともにどんどん拡大してきた」と、力強く話される。
そんな村山さんも現在は、生産量を大幅に減らしている。後継者がおらず、体力的にもきつくなってきたためである。イノシシなどの獣害、地域の過疎化などで年々周囲の状況も厳しくなっており、故郷のこれからを案じておられる。

<栽培品種>
◆年間生産計画 年間生産計画米(2ha) すべて有機JAS   流通業者と個人販売
野菜:レタス(夏場)、サニー(夏場)、里芋(秋~冬)6a、玉ねぎ(夏場)、ハヤトウリ(夏場)
野菜については、二年前から大幅に縮小し、里芋以外の面積は少ない。

<ほ場環境>
圃場は、阿蘇の外輪山に位置し火山灰質が多い。標高500m前後の中山間地に位置する。
植林によって、日照時間の短い圃場もある。

<土づくり>
・発酵鶏糞(購入)と刈草(自家)を切り返しながら何年も寝かせた自家製の堆肥を、毎年投入する。
・ボカシ肥料を購入し、使用している。
米・・・80kg/10a
野菜・・・140kg/10a
長年の経験から、この量が適量であると判断している。鶏糞を入れるので、石灰は必要ないと考えているし、苦土なども使用しない。有機JAS認証のこともあるので、資材の使用には慎重になっている。

<種と苗について>
水稲・・・種は数年に一度更新する。一番よい水田の、掛け干ししたものを使用。
機械でイゲをとるので、播種機も使用可能。
箱に肥料を入れると病気がでやすいため、平箱に山土のみを入れて種まきをする。肥料は代かきした苗床にボカシ肥料を散布し、平らにならす時にコテで土と混ぜる。
種籾は何度か失敗したが、現在は一箱100gぐらい。多いと植え損ないは減るが、病気などになるおそれがある。

里芋・・30年ぐらい前に分けてもらったものを増やして、ずっと種取してきた。
味は、一番良いと思う。品種は正確にはわからないが石川早生系のようだ。種芋はできるだけ
大きいのがよいのではないか。
3月末に、苗床に種芋を芽が出るほうを下にして並べ、芋が隠れる程度に土をかけ、透明のビニールを被せる。芽が少し出たくらいに畑に植え換えるのが一番良い。植え換えると3日ぐらいで発芽する。発芽が早いので、草を取る手間が省ける。

レタス類・・・近くの肥料会社に有機の床土を作ってもらい、使用している。
発芽するまで乾かないようにすることが大事。特にコート種子は、乾くと固くなって発芽が悪くなるようだ。夏場の暑い時は、発芽するまで日陰におくこともある。ただし、芽が出たら、すぐに日向にださないと徒長してしまう。

<雑草対策>
米:ジャンボタニシによる。
野菜:ポリマルチ、管理機、手取り。

<病害虫対策>
イノシシ、鹿、サギ、カラス:電柵を3段張って、1年中、通電している。鹿の侵入もある程度防げる。
米:肥料を控えめにして病害虫の発生を抑えている。いもち病対策として、玄米酢を使用することもある。薄めたものを穂が出る前に散布する。
レタス類:オオタバコガの幼虫は、小さいところを2回ぐらい手取りする。まき始めた頃に芯の方にいるので、よく見ないとわからない。葉の先が少しギザギザになっているのが目印。
里芋:ヨトウムシ対策で卵をバーナーで焼くこともある。

<流通販売>
いろんな場で地元の野菜、米をアピールすることが、後々販路としてつながることがある。
アピールしていることは、第一に安全性。人間の体は何で出来ているのか、ご飯茶碗一杯いくらなのか、米は高いが、ご飯は安いと消費者に考えてもらうようにしている。
極論すれば、一人の農家と10人の消費者が提携すれば、お互い生活できるはずなので、最初はそれを基本とするべき。グループの場合、まずは販路を作ることが大事。生産力はその後追いつけばよい。それまでつなぎ止める交渉力が必要。先手を打つことが大事。

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